保税倉庫に貨物を保管できる期間はどのくらい?期間を過ぎるとペナルティも

公開日:

更新日:

保税倉庫期間のアイキャッチ画像

輸入された外国貨物を保管しておける保税倉庫ですが、いつまでも置いておけるわけではありません。

必ず決められた蔵置期間があります。保税倉庫は外国貨物の最終的な保管場所ではなく、あくまで通関手続きを終えるまでの一時的な置き場であるためです。

しかし実際の現場では、蔵置期間を過ぎても保管状態のままになっていることも珍しくありません。では蔵置期間を過ぎてしまった場合、貨物はどうなってしまうのでしょうか。

この記事では、保全倉庫の利用期間に関するルールについて解説します。

保税倉庫の蔵置期間

保税倉庫に貨物を置いておける期間は、具体的にどのくらいなのでしょうか。

輸入ビジネスをしている方だと、貨物が出荷時期を迎えるまで保税倉庫で保管しておきたいということもあります。その場合、蔵置期間の延長を早めに検討するのがベターです。

保税倉庫の蔵置期間は原則2年

保税倉庫での蔵置期間は基本的に、貨物を搬入してから3ヶ月です。3ヶ月を超えて期間の延長を希望するときには、税関長の「蔵入承認」という許可を受けることで2年を限度に保管できます。

この承認が済んでいない外国貨物は、搬入された日から3ヶ月を超えると収容の対象となります。3ヶ月を過ぎてすぐに収容されるわけではないものの、税関から長期保管の理由について問い合わせを受けるかもしれません。

承認を受ければ延長可能

保税倉庫での蔵置は、税関長による蔵入承認があれば2年を限度として保管が可能とご説明しました。

しかし、特別な理由があると税関長が認めたときは、さらに2年を超えて延長できることもあります。例としては原油の備蓄、酒類の長期熟成、市場が急変し蔵置がやむを得ないとされる場合などです。

また、保税倉庫内にある外国貨物扱いの商品のなかから必要な量だけ輸入許可を得て引き取り、残りは蔵入承認を得て保管しておくこともできます。なお蔵入承認に申し込むには、蔵入承認申請書とインボイスなどの提出が必要です。

保税倉庫について詳しくはこちらをご覧ください。

保税倉庫とは?搬入から出荷までの流れやメリット・デメリットを紹介

保税倉庫で保管期間を過ぎてしまったら

保税倉庫の現場では、規定された蔵置期間を過ぎても、許可や申請なく外国貨物が置かれたままになっていることがしばしばあります。そうした場合、貨物はどのように扱われてしまうのでしょうか。

税関によって貨物を収容される

一定期間を過ぎても延長の手続きがなく、保税倉庫に置かれたままになっている外国貨物に対して、税関長は収容という権限を持っています。収容とは、規定された期間を過ぎても置かれている貨物に対して、税関が占有することです。

収容には通常収容緊急収容の2種類あり、その性質は全く異なります。

  • 通常収容:保税倉庫の蔵置期間を過ぎたあとに収容すること
  • 緊急収容:蔵置期間経過前であっても緊急で収容すること

収容から4ヵ月以内に解除申請を行えば、収容解除の承認を得られます。その場合、貨物の重さや種類、収容期間などに応じた収容課金を納付し、税関長の承認を得なければなりません。

収容後4ヶ月を過ぎると公売に出される

収容された貨物は、そこから一定期間経過すると公売の手続きに進みます。公売とは、収容解除などの手続きがなされないままの貨物が、4ヶ月を経過してもまだ収容されている場合に行う手続きのことです。

公売では、公の機関が強制的に競争入札などの手段で売買を行います。ただし緊急収容を受けた貨物の場合、その内容によっては4ヶ月の経過を待つことなく公売にかけられる可能性もあるため注意しましょう。

輸入貨物の保管期間を延長する理由

輸入貨物の保管期間を延長するとき、どんな理由があるのでしょうか。そのほとんどは、蔵入承認を受けることで得られるメリットのためです。保管期間延長の理由に直結するメリット2つをご紹介します。

在庫調整ができるから

蔵入承認で保管期間を延長して得られる最大のメリットは、日本国内の市場状況に合わせて、必要最小限の数量だけ輸入が可能な点です。すべての貨物を引き取って、万が一売れ残ったとしても、輸入許可後の関税や消費税の払い戻しはできません。

しかし、輸入許可前かつ蔵入承認を得ている貨物は、商品の売れ行きが悪いから外国へ返品したいなどの理由で積み戻し(外国へ返品すること)も可能です。つまり、在庫を抱えるリスクを避けられます。

コンテナ価格上昇の対策のため

2019年12月以降、新型コロナウイルスの世界的な拡大により、コンテナ価格の急騰と海上輸送の運賃高騰が現在も続いています。この結果、原材料や商品など物の価格まで上昇し、日常生活にも大きく影響しています。

このとき運送コストへの対応策として、蔵入承認を得ることが有効です。

  • 1回の輸送で可能な限り多くを輸送して、貨物あたりの運賃を最小化
  • なおかつ日本国内への輸入量は最小限に調整

上記のような理由から、蔵入承認での在庫管理は効率的と言えるでしょう。

保税倉庫での通関手続きに必要な期間

貨物の輸出入を行う際、税関を通過するにあたってさまざまな手続きが発生します。これを税関手続きと言いますが、輸出入の申告における書類の提出や保税倉庫への搬入作業など、すべての手続きにはどのくらい時間がかかるのでしょうか。

財務省関税局による平成29年3月の調査では、税関への輸入申告から輸入許可までの平均的な所要時間は海上貨物が3.1時間、航空貨物では0.3時間でした。貨物が入港してから輸入許可されるまでの所要時間の平均日数は、海上貨物で 2.5日、航空貨物なら0.5日となります。

航空貨物のほうが海上貨物より通関手続き終了までの時間が短い理由は、航空機は船と比較して貨物の積載量が少ないためです。海上貨物でも航空貨物でも、輸入申告から24時間以内に輸入許可とするのが原則となっています。

保税倉庫へ搬入について詳しくはこちらをご覧ください。

保税倉庫へ搬入するときの作業詳細と輸出入の手続き

まとめ

保税倉庫の蔵置期間についてのルールを解説しました。もし蔵置期間を過ぎてしまって収容や公売されたとしても、これは法令違反や犯罪によるものではありません。貨物の所有者の意志で、取り戻すことも可能です。

ただし解除のためには、収容課金と呼ばれるペナルティに加え、収容に要した費用を支払う必要があります。余分な出費を避けるためにも、蔵置期間延長を希望する場合には、余裕を持って蔵入承認を得ておくようにしましょう。

この記事は執筆された時点での情報を元に記載されております。文書・写真・イラスト・リンク等の情報については、慎重に管理しておりますが、閲覧時点で情報が異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。記載内容や権利(写真・イラスト)に関するお問合せ等はこちら

オススメの記事

single-news