循環棚卸とは?やり方や実施する際のメリットなどを解説

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循環棚卸は、商品の場所や種類など、特定の在庫ごとに作業する日を分けて実地棚卸を行う方法です。棚卸作業の実施日を分けることで少人数でも行えるほか、ほかの業務を棚卸しのために停止する必要がありません。このように循環棚卸には複数のメリットが期待できますが、実施にあたってはいくつかのポイントもあります。

本記事では、循環棚卸の進め方やメリット・デメリット、実施にあたってのポイントをチェックしてみましょう。棚卸業務を最適化することで在庫差異などのエラーを減らしたい方は、参考にしてみてください。

 

■この記事でわかること

  • 循環棚卸の意味
  • 循環棚卸のやり方
  • 循環棚卸のメリット・デメリット

 

循環棚卸とは

循環棚卸とは、在庫の保管場所や品目ごとに作業する日を分けて、在庫数・金額を確認するための実地棚卸を行う方法 です。一般的な棚卸しの場合、すべての在庫を一斉に確認するため、入出庫などの他業務は停止する必要があります。

しかし、循環棚卸では棚卸しを実施する棚だけ商品の入出庫をストップすればよく、倉庫の全体のオペレーションを止める必要がありません。主に、頻繁に入出庫が行われるコンビニなどの小売店で採用されている棚卸方法です。

循環棚卸の目的

循環棚卸の目的は、倉庫内の業務を停止せずに、自社の資産状況を正確に把握して利益と税額を明らかにすることです。一般的な棚卸しのように作業中でも営業を停止させる必要がないため、入出庫などの業務を遂行しながら在庫の確認ができます。

ただし、棚卸しが正確にできなければ、決算書の記載内容が実態とかけ離れていることになり、財務状況が把握できなくなってしまうでしょう。在庫差異を防ぐためにも、入力ミスや記入漏れのないよう正確な作業が求められます

大手企業などでは、勘定科目の虚偽を検出する実証手続を行うため、棚卸しの現場に監査人が立ち会うことも珍しくありません。

一斉棚卸との違い

一斉棚卸しは、すべての在庫を一斉に棚卸しする方法です。一斉棚卸では、棚卸中に入荷・出荷があることで差異が発生する恐れがあるため、作業が終わるまで他業務は完全にストップしなければなりません。結果として業務効率が低下する場合もあるでしょう。

一方の循環棚卸は、在庫を分類したうえで数日に分けて棚卸しするため、全体の入荷・出荷をストップしなくても作業できるという点で違いがあります。

また一斉棚卸では、商品数や種類が多い場合、在庫のカウントに膨大な時間が必要になるだけでなく、作業者への負担も大きくなるでしょう。実施頻度は年間1回や半期・四半期に1回などが目安ですが、そのたびに入出庫をストップし、多くのスタッフをリソースとして割く必要があります。 対する循環棚卸は、1日、1週間ごとなど短い周期で作業を行うため、少人数でも実施が可能です。

台田 雄樹
台田 雄樹

循環棚卸により全ての業務を停止する必要がなくなるだけでなく、商品の損傷・破損を早期発見することもできます。

循環棚卸のやり方

循環棚卸の進め方は、以下のようになります。

  1. 倉庫内にある在庫の種類やエリアなどを項目別に分ける
  2. エリアごとの棚卸計画表を作成して、日程と手順を決める
  3. チェック表を作成
  4. 作業対象の商品の入出庫を止める
  5. 作業対象の在庫を数える
  6. チェック表を活用してミスがないかを確認(在庫差異があれば修正)
  7. 入出庫を再開し、4に戻る

まずは計画表とチェック表を作成し、作業の流れを明らかにします。流れが決まったら、棚卸しを実施する棚の入出庫を止め、チェック表を持参のうえで作業に取りかかりましょう。一つの棚の棚卸しが完了したら、次の棚の入出庫を止めて同様の手順で進めていきます。

循環棚卸を正確に行うには、日頃から実在庫と理論在庫(帳簿上の在庫)の数に誤差がないよう正しく記録されていることが前提です。

循環棚卸のメリット

循環棚卸には、以下3つのメリットがあります。

  • 入出庫などの大規模な倉庫業務を止める必要がない
  • 在庫差異の発生を防げる
  • 少人員で実施できる

それぞれ詳しく見てみましょう。

入出庫などの大規模な倉庫業務を止める必要がない

循環棚卸は、在庫の場所や種類ごとに作業する日時を分けて行うため、入出庫をはじめとした倉庫内で行われる棚卸以外の業務を停止する必要がありません。上記でも触れたとおり、一般的に採用されている一斉棚卸では、作業中に入出庫を止めなければ在庫差異が発生してしまうため、一時的に営業を止めることになります。

循環棚卸であれば、営業を続けながら棚卸を実施できるため、業務効率の向上を図れるとともに棚卸時でも利益を得ることが可能です。EC市場の拡大や消費者からのニーズなどにより24時間つねに稼働する企業も増えているなか、棚卸しに伴い全体のオペレーションを停止させる必要がないのは大きなメリットといえるでしょう。

在庫差異の発生を防ぐことができる

循環棚卸を定期的に実施することで、原因不明の在庫差異を早いタイミングで把握、防止できます。在庫差異が発生した状態では、需要に対して必要数を出荷できない可能性もあり、企業としての信用を失いかねません。もし在庫差異が大規模なものであれば、倉庫全体の営業を停止したうえで一斉棚卸を実施しなければならないでしょう。

循環棚卸は1日や1週間など短い期間ごとに商品を限定して棚卸を行うため、作業1回あたりの工数が多くないぶん、在庫差異の発生に気付きやすいのがメリットです。定期的な循環棚卸を継続することで、万が一のエラーにも迅速に対応しやすいといえます。

少人員で実施できる

循環棚卸は、商品の保管場所や種類ごとに順次棚卸しを行うため、倉庫内の在庫が多くても少人数のスタッフで対応できます。一斉棚卸の場合、確認すべき在庫の数や種類が多くなればそれだけ大人数で作業にあたる必要があり、ほかの業務が手薄になってしまうこともあるでしょう。

循環棚卸は、従業員が少ない企業や日によって作業できるスタッフの数が違うケースでも、人員の確保がしやすいのがメリットです。

循環棚卸のデメリット

循環棚卸にはメリットだけでなく、以下のようなデメリットもあります。

  • 手作業によって業務精度が低下する
  • 的確な在庫管理が必要になる
  • 棚卸しの作業時間が長くなる

1日ごとに棚卸しの範囲を限定して作業することから、少人数でも実施できる反面、倉庫内の棚卸しを完了させるまでに時間がかかってしまう可能性があります。また、手作業での棚卸しはヒューマンエラーにも注意が必要です。

手作業によって業務精度が低下する

手作業で循環棚卸を行う場合、カウントミスなどが発生する可能性があります。

一斉棚卸も同様にミスが発生するリスクはありますが、循環棚卸は日程を分けて作業を進めるため、最初のほうに確認した棚と直近で確認した棚では、どうしても期間が空くのが一般的です。さらにこの間、全体の入出庫を止めることはないため、カウントにズレが生じるケースも考えられるでしょう。

また、特に棚卸しを手作業で行う場合は、スタッフの経験値によって作業精度にむらが出やすくなります。複数人で取り組む場合や、日によって取り組むスタッフが異なるときには、在庫データの精度にも影響するため注意しましょう。

的確な在庫管理が必要になる

循環棚卸はある程度頻繁に実施するケースが多いため、カウントの整合性を維持するためにも、参照する在庫データは正確でなければなりません。在庫データがそもそも間違っていると循環棚卸を行っても数が合わず、在庫差異が生まれてしまいます。この在庫差異があまりに大きい場合、在庫管理方法に問題がある可能性があるでしょう。

在庫管理を適切に行うためには、在庫管理システムの導入が効果的です。そのほか在庫管理をスムーズにする方法を知りたい方は、以下の記事も参考にしてみてください。

棚卸しの作業期間が長くなる

ここまで解説してきたとおり、循環棚卸は在庫の場所や種類ごとに作業する日時を分けて実施するため、棚卸しがすべて完了するまでにはある程度時間がかかります。一斉棚卸に比べると1日あたりの作業工数は減りますが、棚卸対象の商品に関しては入荷・出荷が行えないため、棚卸し以外の業務が一時的にストップしてしまう瞬間もあるでしょう。

棚卸しの期間が長くなれば人員の確保も必要になり、そのぶんのコストも発生します。作業時間を短くするためには、業務プロセスの見直しやアウトソーシングなどの対策が有効です。

循環棚卸を実施する際のポイント

循環棚卸は倉庫内の在庫を分類したうえで日程を分けて実施するため、作業精度を維持するためにも、普段から正確な在庫管理を行うことが重要になります。よって在庫管理の正確性をいかに高めるかがポイントといえるでしょう。在庫管理の品質を高める工夫として、作業の標準化やロケーション管理による倉庫内の整理整頓などが挙げられます。

また、循環棚卸を日常業務として取り入れる場合、そのほかの業務の妨げとならないよう、効率的に実施できなければなりません。少ないスタッフでも対応できる計画で作業を進めるほか、先述した在庫管理システムの活用も検討しましょう。

棚卸業務の効率化をお考えの方は、こちらの記事もご参照ください。

台田 雄樹
台田 雄樹

棚卸しは企業会計にも関わるため、在庫を抱える会社には欠かせない業務になります。しかし、非常に労力を要するため、保管から一貫して物流会社へ委託することも一つの手段です。

まとめ

循環棚卸は、在庫商品を場所や種類で分類し、日を分けて棚卸する方法です。循環棚卸には、作業人数の削減や倉庫全体で入出庫などの他業務を中断する必要がないといったメリットがあります。

一方で、手作業によるカウントミスのリスクが高まったり、日々の在庫管理が重要になったりなどのデメリットもあるため、棚卸しの効率や精度を下げないための工夫が必要です。在庫管理について課題を感じているのであれば、在庫管理システムの導入やアウトソーシングも視野に入れてみましょう。

浜松委托運送では、お客様のご要望と状況に合わせた高品質な在庫管理を実現可能です。棚卸しも随時行い、在庫差異による誤出荷ゼロを叶えるための体制づくりを徹底しています。棚卸しの効率化や在庫管理についてお困りのことがありましたら、ぜひ浜松委托運送へご相談ください。

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