余剰在庫とは?余剰在庫のリスクと削減方法を解説

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余剰在庫とは、需要に対して入荷した商品の数量が多く、売れ残りとして倉庫に保管されたままの状態を意味します。類似した言葉に滞留在庫がありますが、これらの大きな違いは「売れる見込みがあるか否か」です。余剰在庫は効率的な物流を妨げるだけでなく、経営面にも影響を及ぼします。

この記事では、余剰在庫の発生要因や余剰在庫によって引き起こされるリスク、そして余剰在庫を防ぐ方法について詳しく見ていきましょう。

 

■この記事でわかること

  • 余剰在庫の原因
  • 余剰在庫を抱えた場合のリスク
  • 倉庫保管を解決・予防する方法

 

余剰在庫とは

余剰在庫(よじょうざいこ)とは、本来の市場や顧客の需要よりも商品を多く入荷してしまい、売れ残ったまま倉庫に保管されている状態のことです。余剰在庫は商品としての価値はありますが、売れない状態がそのまま続くと、倉庫の保管費用や管理コストの増加、キャッシュフローの悪化を招きます。

余剰在庫を防ぐためには、精度の高い需要予測や適正な生産量、そして適切な在庫管理が有効です。アパレルの分野でいえば、複数のサイズやカラーがある商品、季節のトレンド商品は需要の変化が大きく、余剰在庫に注意が必要になるでしょう。

なお、余剰在庫と過剰在庫はほぼ同義です。さらに似た言葉として滞留在庫といった言葉もありますが、こちらは長期間売れていない在庫を指します。余剰在庫(過剰在庫)と滞留在庫には「売れる見込みがあるか否か」という点で大きな違いがあり、将来的に売れる可能性がほぼなく、倉庫で長期間にわたって留まり続けるのが滞留在庫です。

余剰在庫の発生要因

余剰在庫が発生する要因には、主に下記の4つが挙げられます。

  • 需要予測の精度が低い
  • 商品価値の低下
  • 返品の増加
  • 在庫を正確に管理できていない

それぞれ詳しく解説します。

需要予測の精度が低い

需要予測の精度が低い場合、余剰在庫を引き起こすことがあります。「おそらく売れるだろうから大丈夫」と安易に考えて、需要以上に商品を仕入れてしまうと、余剰在庫が発生する可能性が高くなります。

需要予測は季節や販促イベント、セールの開催などで大きく変動することも珍しくありません。需要予測の担当者の経験が浅い場合も、適切な仕入数量の見極めがうまくいかずに余剰在庫の原因となるケースがあります。市場の動向や過去の販売データをもとにして、より精度の高い需要予測を行い、商品を仕入れることが大切です。

商品価値の低下

販売している商品が流行遅れになったり、商品力の強い競合製品の販売が増加し、自社の商品価値や魅力が下がったりすると、需要は減少します。仕入れの段階では適正と判断された数量だったとしても、仕入れ後に商品価値が変化するようなケースでは余剰在庫が発生する恐れがあるでしょう。

市場のトレンドの動きが速い市場やSNSの影響で一時的に注目されたアイテムは、一過性で飽きられるのが早く、余剰在庫につながりやすいといえます。そのため、消費者のニーズの変化に敏感になり、競合商品の動きなど市場の動向を注視した販売計画の立案が必要です。

返品対応が増える

販売した商品の品質などに問題があった場合は、返品の増加に伴い余剰在庫も増加します。商品そのものと消費者への訴求にギャップがあるケースも、販売が低迷して返品が増加する可能性があるでしょう。広告が過剰で実際の商品が見劣りしてしまうと、消費者の期待を下回ることになるためです。

倉庫の保管時や検品時、配送時など物流の工程で問題が発生した商品を納品した場合も、返品が増えることになります。商品のみでなく外装についての不具合も、消費者に不満を抱かせかねません。返品を減らすためには、商品の入荷・出荷時に検品を念入りに行い不良品の発送を予防することが重要です。

在庫を正確に管理できていない

自社在庫を正確に管理できていないことも、余剰在庫が発生する原因の一つです。倉庫で実際に保管している現物は需要に対して十分な在庫があるにも関わらず、在庫管理の精度が低く、実態とデータが乖離している場合があります。こうしたケースでは、欠品を恐れ新たに商品を仕入れてしまうため、余剰在庫が発生するでしょう。

在庫管理方法がアナログで属人化していたり、手順が煩雑だったりすると、正確な在庫管理の障害となります。解決策として、業務プロセスの見直しや在庫管理システム導入の検討が必要です。

余剰在庫を抱えるリスク

余剰在庫を抱えた状態には、以下5つのリスクが伴います。

  • 商品価値や販売価格が低下し、廃棄のもとになる
  • 在庫管理・保管維持コストがかかる
  • 保管スペースを圧迫し、倉庫の有効活用を阻害する
  • 収支の悪化を招き、キャッシュフローの悪化につながる

入荷後、売れないまま時間が経った商品は品質・価値が下がります。さらに保管期間が長期化するほど管理コストもかかることから、経営面にも悪影響を及ぼしかねません。

商品の品質が下がる

余剰在庫は多くの場合、販売タイミングを失い保管期間が長期化するほどに、商品価値が低下します

例えば食品なら、賞味期限を迎えて品質が低下するでしょう。アパレルであれば、流行やシーズンを過ぎてしまうことで商品の価値が下がります。さらに保管期間が長期化すると、破損・退色など、品質の著しい劣化を招いてしまうかもしれません。

また、家具などは保管状態によりセットとなる部品が紛失し、売れなくなることもあります。このようにして価値が低下した商品は、最終的に廃棄の対象となるのが一般的です。

在庫管理・維持コストがかさむ

余剰在庫は、倉庫の保管スペースを長期にわたって占めてしまうことになります。これにより必要な商品に対する保管スペースが足りなくなった場合、新たな倉庫を借りなければなりません。倉庫の賃貸料が増加するだけでなく、管理コストや人件費もかさんでしまうでしょう。

また、保管スペースが圧迫されることで、ピッキングの動線や仕分け作業など保管以外の作業にも影響を与える可能性があります。棚卸しでは、余計な数量のカウントが発生することで作業負荷が増加し、棚卸し精度が低下する原因にもなりかねません。余剰在庫は会計上、企業の資産として計上されるため、納税額が増加するリスクもはらんでいます。

保管スペースの有効活用ができなくなる

余剰在庫を長期にわたって倉庫内で保管し続けている状態では、保管スペースの有効活用ができません。結果として、売れる見込みのある商品を入荷できずに販売機会を失ってしまい、売上減少につながる恐れがあります。

長期にわたって利益を生み出さない余剰在庫は、倉庫費用を浪費するコストです。保管スペースのロスを防ぐためにも、適切な在庫数量の管理によって、余剰在庫の発生を防ぐ必要があります。

キャッシュフローの悪化につながる

在庫商品は、販売されて初めて収益化されます。しかし、余剰在庫は長期的に収益化されない場合も珍しくなく、仕入原価の金額が売上金額よりも大きくなるケースもあるでしょう。粗利率の低い商品が余剰在庫化すると、仕入原価の回収が困難になります。

仕入原価の未回収は、キャッシュフローに悪影響を与える大きな要因です。資金を事業投資に回せないだけでなく、保管コストが発生し続けることで、収支の悪化を招きかねません。現金化されない余剰在庫はキャッシュフローの悪化につながり、企業の経営を圧迫します。

蜂巣 稔
蜂巣 稔

余剰在庫の発生によって生じる大きなデメリットの1つは、利益を生み出さない後ろ向きの仕事に対して、人・時間・金といったリソースを投下し続けることです。

余剰在庫の発生を減らすための方法

余剰在庫の発生を減らすための方法

余剰在庫の発生を減らすための工夫として、以下の6つの方法が考えられます。

  • 適正在庫を計算する
  • 需要を正確に把握し、予測精度を高める
  • 生産量を管理する
  • 商品のバリエーションを制限する
  • 在庫管理の仕組みを見直す
  • 在庫管理システムを導入する

適正在庫の計算や需要予測の正確性を上げるほか、在庫管理の方法を見直すのも一つの選択肢です。

適正在庫を計算する

余剰在庫削減のためには、商品の適正な在庫数量の算出が必要です。需要や販売見込みに対して過剰な在庫がある場合、余剰在庫が発生するリスクがあります。よって倉庫内の在庫数を正確に把握することが、適正な発注数量を明確にし、余剰在庫を未然に防ぐことにつながるでしょう。

仕入れ担当者は欠品を恐れるため、過剰に発注する傾向にあります。正確な在庫数の把握は、過剰発注を防ぎ、余剰在庫を防止するための前工程です。

蜂巣 稔
蜂巣 稔

余剰在庫の把握には、一定期間の間に商品の入庫と出庫が何回転したかを確認する在庫回転率の計算も役にたつでしょう。

需要を正確に把握し、予測精度を高める

需要を正確に把握、予測することは余剰在庫の削減につながります。需要以上に生産し発注することが余剰在庫につながることから、需要予測は余剰在庫を防ぐ上流工程として極めて大切です

商品を適切な数量で生産・発注するには、需要の正確な把握・予測が欠かせません。そもそも需要予測の数字は、欠品リスクを回避するために営業、需給計画、購買担当などの各層で少しずつ数字が盛られ、過剰になる傾向にあります。

また、新製品は需要予測を立てることが難しい場合もあるでしょう。こうした商品では、過去に販売された同様の商品のデータを参考にしたり、経験値があるメンバーに確認したりすることをおすすめします。関係部門で需要予測の数字をレビューすることも、精度を高めるための一つの方法です。

さらに正確な需要予測を行うためにはAIを利用した需要予測ツールの活用も考えられます。

生産量を管理する

生産量を適切に管理し、需要以上の生産を避けることで余剰在庫の減少につながります。生産量は工場の生産効率やロットサイズ、歩留まりなどから決定されるのが一般的です。しかし、こうした生産数量は必ずしも需要とマッチするとは限らず、需要と合わない生産数量は余剰在庫を生み出します。

工場の生産状況を可視化し、販売・生産・物流部門など関係する部門で適正な生産量を管理する必要があるでしょう。

商品のバリエーションを調整する

仕入れる商品のバリエーションを制限することも、在庫管理のしやすさにつながります。同じ商品でも、複数のサイズや色などのバリエーションが増えるごとに在庫管理は複雑化するためです。

バリエーションが増えれば、発注のみならず需要計画や倉庫への入庫、検品、在庫管理、出庫など、それぞれの工程で細かな工数が増加します。結果的に管理工数が増え、担当者の目配りが不足するため余剰在庫や欠品リスクが発生しやすくなるでしょう。

このため、ABC分析などを用いて売れ筋の商品や出荷が低迷する商品を分析し、商品数やバリエーションを整理するなどの工夫が効果的です。

在庫管理の仕組みを見直す

余剰在庫発生の原因として、そもそも在庫管理の方法に問題があるケースもあります。例えば、厳密な在庫管理ルールや入出庫の手順が決められていなかったり、現場の担当者によって手順が異なっていたりする場合などです。

手書きの紙ベースやFAXでの情報のやりとり、Excelで手入力を行うなど、属人的でアナログな仕組みが正確な在庫管理を阻害しているケースも多くあります。また、部門ごとで品名や品番が一元化されていないケースや、マスターデータの整備がされていないケースも問題です。

こうした仕組みを見直し、システムで管理することで、管理工数の削減が期待でき、余剰在庫の削減にも貢献します。

在庫管理システムを導入する

在庫管理システムやWMS(倉庫管理システム)を導入することで、在庫管理の精度を高める効果が期待できます。在庫管理システムでは、在庫の状況をリアルタイムで可視化でき、適切に管理することが可能です。適切な数量の商品を発注できるため、余剰在庫の発生を防ぐことにつながります。

さらに、属人化されたアナログ業務をデジタルで自動化することで、在庫管理の精度向上のみならず、倉庫運営の生産性向上と効率化も目指せるでしょう。

蜂巣 稔
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余剰在庫の発生を減らすための方法には物流部門だけで実行できる方法と、社内のステークホルダーの協力が必要な方法があります。「生産量を管理する方法」や「商品のバリエーションを調整する」については、生産部門やマーケティング部門などの担当部門に余剰在庫のリスクを理解を深めてもらう必要があります。

まとめ

余剰在庫は、需要予測の精度の低さや商品力の低下など、さまざまな原因によって起こります。余剰在庫化が発生した場合、倉庫の保管スペースを圧迫するほか、在庫コストや管理コストの増加を招きかねません。さらには、キャッシュフローの悪化など会計上のリスクも伴い、健全な企業運営を圧迫する恐れがあるでしょう。

こうしたリスクを予防するためには、適正在庫の計算と需要予測の正確性を上げるほか、場合によっては在庫管理方法そのものを見直す必要があるかもしれません。適切な在庫管理に関するご相談は、豊かな知見と経験がある浜松委托運送へご連絡ください。

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