先入れ先出しとは?在庫管理のメリット・デメリットや方法を解説

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先入れ先出しは入庫した商品から出庫する管理方法です。特に食品や化粧品のような消費期限のある商品は、先入れ先出しを徹底することで、商品の劣化による不良在庫を削減することができます。

また、先入れ先出しの考え方は、適切な在庫数を把握するためにも役に立ちます。

この記事では先入れ先出しとは何かを紹介します。実際の作業方法の事例についても紹介していますので、具体的な管理方法を知りたい方も参考にしてみてください。

 

■この記事でわかること

  • 先入れ先出しとは
  • 先入れ先出しのメリットデメリット
  • 先入れ先出しの作業方法

 

先入れ先出しとは

先入れ先出しとは

先入れ先出し(FIFO)は、商品を倉庫や販売場所に収納した際に、最も古い商品から順に出庫する管理方法です。つまり、最初に入庫した商品から出庫されます。たとえば、9/1、9/8、9/15にそれぞれ入庫した商品は、注文が入ると9/1の入庫分から出荷されます。

この方法は、出荷や入荷のオペレーションを単純化し、在庫管理を効率的に行うことが目的です。商品が一定の順序で出庫されるため、倉庫内の商品配置が整理され、在庫のローテーションが自然に行われます。

また、先入れ先出しは、古い商品から優先的に出庫されるため、商品の品質劣化や廃棄を最小限に抑えることも可能です。そのため、小売業や製造業を中心に使われる管理方法となります。

先入れ先出しのメリット

先入れ先出しを実施することで、在庫管理が楽になり、商品の品質が維持しやすくなります。主な先入れ先出しのメリットは下記の通りです。

在庫管理が楽になる

先入れ先出しを実施するためには、倉庫内や販売スペースの整理整頓が重要です。なぜなら、古い商品から出庫するためには、商品が入庫された順に整理されている必要があるからです。

整理整頓によって、倉庫や棚の使い方を工夫すれば、商品の保管や取り扱いも楽に行えるようになります。また、在庫数も正確に把握しやすくなるため、管理にかかる人件費の削減やミスの軽減にもつながるでしょう。

商品の品質が維持できる

先入れ先出しを実践すると、入庫日が古い順に出庫でき、倉庫内に滞留する商品を最小限に抑えられます。これにより、長期保管による商品の劣化や品質の低下を防ぐことができます。

特に食品や飲料、医薬品など、消費期限がある商品は、先入れ先出しによる管理が基本です。また、消費期限切れによる不良在庫も減らせることで、ブランドイメージの低下やクレーム発生率の削減にもつながるでしょう

古い商品を捌きやすくなる

先入れ先出しを実践することで、倉庫や販売場所において古くなった商品を売り出しやすくなります。また、古い商品が棚の前側に出ているため、価格の値下げやセールの対象にすることが簡単です

価格の値下げやセールを行えば利益率は下がりますが、結果的に賞味期限や消費期限などが近い商品を売り出しやすくなるでしょう。

先入れ先出しのデメリット

ここでは先入れ先出しのデメリットを紹介します。先入れ先出しを実施するためにはどのようなことに注意点すべきなのかも知っておきましょう。

在庫管理のデータが増える

先入れ先出しで在庫管理をする際は、正確な在庫管理が求められます。また、各商品の情報も正確に記録する必要があります。以下の表は、在庫管理に含まれるデータの例です。

  • 商品名
  • 商品番号
  • 商品の入荷日
  • 製造年月日
  • 賞味(消費)期限
  • 使用期限
  • 出荷期限

これらのデータは商品の追跡や品質管理、在庫ローテーションに用いられます。特に食品や医薬品などは、賞味期限や消費期限が安全性に直結します。

データの正確性を確保するためには、これらの情報を統合して管理することが大切です。データの分散や不整合があると、在庫管理の信頼性が損なわれる可能性があります。そのため、必要に応じて在庫管理システムの導入や新たな管理方法を検討しましょう。

保管現場の作業工数が増加する

先入れ先出しは、一部の保管現場によっては、作業工数が増加する原因となります。たとえば、棚が整理されていない状態や奥に古い商品が配置されている場合などです。

そのままの状態では、出庫する際に一度古い商品を取り出してから、新しい商品を奥に入れる作業が生じます。その際に古い商品の在庫数が多いと、時間や労力が必要になるでしょう。

また、異なる日付が混在している場合は、古い商品を見分けてピッキングする必要があります。一方、先入れ先出しではない場合は、空いてる場所に入庫し、取り出しやすい商品からピックアップするだけで済むため、このような手間がかかりません。

商品によっては運用の効果がない

先入れ先出しはすべての商品に適しているわけではありません。たとえば、アパレル商品やインテリア雑貨など、明確な使用期限が設定されていない商品は、先入れ先出しに向いていないでしょう

そのため、全ての商品を先入れ先出しで管理しようとするのではなく、商品の種類ごとに適切な在庫管理方法を選択する必要があります。

市場変動や顧客ニーズの変動に対する対応が難しい

先入れ先出しは、在庫の古い商品が優先的に出庫されるため、市場のニーズに合わせた提供が難しくなります。特に新たなトレンドで急激に需要の変化が発生した場合は、これに対応するまで時間がかかる可能性があるでしょう。

顧客ニーズの急な変動や競合他社の動きに対応するためは、古い商品をセールの対象にするなど、柔軟な販売促進策が求められます。その際はセールやプロモーションを活用すると、古い在庫が販売しやすくなり、新しい商品への移行も促進できます。

また、需給予測ツールの活用も市場変動の予測に効果的です。ツールを用いて市場の需要を予測すれば、在庫を適切に調整しやすく、過剰在庫のリスクも抑えられるでしょう。

先入れ先出しの作業方法の事例

先入れ先出しを実施するためには、倉庫内のルールから決める必要があります。具体的な作業方法は下記の通りです。

  1. 倉庫内のルールを決める
  2. 入庫時に在庫管理表に記入する
  3. 商品情報を書いたシール・ラベルを貼り付ける
  4. 商品を棚の定位置に置く
  5. 陳列された在庫品を棚の手前に置く
  6. 出庫時に手前へ持っていく

1.倉庫内のルールを決める

先入れ先出しの実施には、事前のルール決めや従業員への周知が大切です。ルールの内容は作業内容や事業者によって異なります。

しかし、賞味期限や使用期限が短い商品を優先的に取り扱うこと、商品の配置や収納方法、棚卸しの頻度といった内容は、どの事業者にも共通した先入れ先出しのルールとなります。

これらのルールは従業員に周知するとともに、責任者がルールを管理すると、入庫時の作業負担も軽減しやすいでしょう。責任者はルールが正しく守られているのかをチェックできると、作業員にも浸透しやすくなります。

2.入庫時に在庫管理表に記入する

ルールが決まったら在庫管理表に商品情報と入荷数量を記入します。その際、賞味期限やロット情報などの情報も忘れずに記録してください

出庫や入庫のたびに数量を記録すれば、最新の情報を確認しやすくなります。

3.商品情報を書いたシール・ラベルを貼り付ける

3.商品情報を書いたシール・ラベルを貼り付ける

商品が入荷したら、外装箱に商品情報が記載されたシールやラベルを貼り付けます。賞味期限などの商品情報は、見やすいように貼ることがポイントです

既に外装箱にこれらの情報がすでに記載されている場合、この工程は不要となります。

4.商品を棚の定位置に置く

同じロットや賞味期限の商品をパレットや収納棚の指定位置に収納します。商品が異なる場所に散らばってしまうと、管理が難しくなるため、なるべく一カ所に集約できるようにしましょう

5.陳列された在庫品を棚の手前に置く

古い商品は手前に配置し、新しい商品は後で出荷できるよう奥に配置します。出荷時の取り出しやすさにもつながるため、手間が最小限になるように設置してください

6.出庫時に手前へ持っていく

出荷時には、あらかじめ手前にある古い商品から順番にピッキングしていきます。その際は取り扱いを誤らないよう、在庫管理表を確認しながら正確に行いましょう

先入れ先出しが徹底できないときの解決策

ここでは先入れ先出しが徹底できないときの解決策を紹介します。先入れ先出しが徹底できないときは、下記の内容を参考にしてみてください。

適正在庫数を決める

保管している在庫量が多いと、品質の劣化などを理由に商品を破棄するリスクが高まります。余分な在庫を持たないようにするためには、適正在庫数の分析が重要です。在庫の量が適正であれば、先入れ先出しを実践する際に管理するデータの数も抑えられます。

また、高額商品や限定品を取り扱う場合は、長期保存に伴ってコストがかかるため、需要予測を正確に行う必要があります。需要の予測精度を高めるためには、市場動向や競合他社の動きを常に追いかけることが重要です。

特に電子機器等の商品は、技術の進化により型落ち製品になりやすいため、古い機種やバージョンの商品は、セールなどを行い早めに販売することも効果的です。

ABC分析を活用する

ABC分析は在庫アイテムを優先順位に応じてA、B、Cのカテゴリに分類する方法です。Aクラスには売上高の大部分を占める高価値商品、Bクラスには中程度の売上高を持つ商品、Cクラスには売上のわずかな部分を占める低価値商品に分けます。

ABC分析に基づいて在庫管理を行えば、適切な在庫管理がしやすくなります。たとえば、高価値商品は在庫数に注意を払うことで、補充戦略が立てやすいでしょう。一方低価値商品については、適切な在庫レベルを設定することで、過剰在庫を削減できます。

さらに、ABC分析に基づいてロケーション管理を行うことで、在庫管理のしやすさにつながります。高価値商品はアクセスしやすい場所に配置し、低価値商品はアクセスのしにくい場所に配置することで、倉庫のスペースを有効活用しやすいでしょう。

5S活動

5S活動は、「整理(Seiri)」「整頓(Seiton)」「清掃(Seiso)」「清潔(Seiketsu)」「躾(Shitsuke)」の5つの要素から成り立っています。これらを実施することで、倉庫内の作業をスムーズに進めやすくなります。

「整理」
不要な物品や在庫を削減し、必要なアイテムを整理整頓します。これにより、過剰在庫や不必要なスペースを減らし、先入れ先出しの実践をサポートします。

「整頓」
商品の配置を最適化し、アクセスしやすい状態にします。適正な棚卸しや収納方法の設計により、在庫管理が効率的に行えます。

「清掃」および「清潔」
作業環境の清潔さを維持するための要素です。品質を維持し商品の劣化を防ぐ目的もあります

「躾」
5Sの原則を従業員に浸透させ、ルール化する要素を指します。マニュアルの作成やスタッフ教育を通じて、先入れ先出しの実践を徹底します

5S活動を実施することで、倉庫内の作業環境が改善され、在庫管理が効率的に行えるようになります。これにより、先入れ先出しが実施しやすくなり、品質の維持やコストの削減にもつながるでしょう。

参考:経済産業省 マンガでわかる「5S活動」

商品の視認性を工夫する

商品の状態や特徴をわかりやすく表示することで、在庫を適切に扱いやすくなります。たとえば、商品にカラーシールを貼ることで、入荷日や使用期限が一目で識別できます

特に食品や医薬品などの商品は、消費期限や保管条件が重要です。その際はカラーシールを用いることで、これらの情報を見逃すリスクを減らし、商品の品質維持にもつながるでしょう。

また、視覚的な情報は、スタッフの教育にも役立ちます。特に新入社員や臨時スタッフに対して、商品を識別しやすい環境を提供できれば、作業効率の向上やミスの削減にも役立ちます。

まとめ

先入先出しは古い商品を優先して出庫するため、消費期限のある食品や化粧品などの保管に用いられます。また、在庫の管理の負担軽減や古い商品を捌きやすいメリットもあります。

しかし、商品によっては先入れ先出しが適していない場合も少なくありません。取り扱う商品によって最適な方法で管理する必要があります。

浜松委托運送は先入れ先出しによる商品の入庫・出庫オペレーションを構築しています。EC事業に取り組みながらも物流工程でお悩みの事業者様は、お気軽にご相談ください。

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