棚卸差異とは?棚卸差異の原因と棚卸差異の対策について詳しく解説

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棚卸差異とは、帳簿の在庫と実在庫の差異のことで、実地棚卸を行った際に帳簿の数字と実在庫数が異なってしまった場合に起こるものです。

棚卸差異が起きてしまうと、最悪の場合は顧客からの信用を失う可能性もあります。ほかにもさまざまな悪影響を及ぼすリスクがあるため、小さな差異であっても対策しなければなりません。

本記事では、棚卸差異が起きる原因と対策について解説しています。棚卸業務を行なっている方や、棚卸差異に悩んでいる方は、ぜひ最後までご覧ください。

 

■この記事でわかること

  • 棚卸差異が起きる原因
  • 棚卸差異が起きたときの対処法
  • 棚卸差異が起きないための対策

 

棚卸差異が起きてしまう原因

棚卸差異が起きる原因として、主に以下の5つが挙げられます。

  • 伝票の入力ミスや記入漏れ
  • 入出庫の検収(検品)ミス
  • 仕入れ先によるミス
  • 棚卸におけるミス
  • 在庫管理の整備不足

対策を行う前に原因を把握し、改善点を見つけましょう。以下でそれぞれ詳しく解説します。

伝票の入力ミスや記入漏れ

現状の物流においての在庫管理は、現場で在庫情報を手作業で数え、その後エクセルなどの表計算シートへ入力するという作業が一般的です。

この作業の方法だと、作業時間にタイムラグが生じます。手作業の入力でもあるので数字を間違えて入力したり、記入すべき欄を間違えてしまうという単純なミスも起こります。これらが棚卸差異の原因となりますが、人為的な作業なので、ミスをなくすことは非常に難しいです。

また、商品管理を伝票で管理している場合は、伝票処理をし忘れるという漏れが発生してしまうことがあります。物流での入庫・出庫の情報自体が落ちてしまうのです。伝票を処理したあと、データベースに反映されていないのに処理済みとしてしまうケースもあります。

入出庫の検収(検品)ミス

在庫の数え間違いや数え忘れ、重複、見間違い、記入ミスや記入抜けなど、入出庫時の検収ミスでも棚卸差異につながります。出荷してしまった商品は返品されるタイミングが読めないため、到着次第のデータ更新となってしまいます。

また、100%の出荷検品を行っている場合、通常であれば出荷検品ではじかれた商品をまとめておき、一日の業務の終了時に棚戻しを行う工程を取っているでしょう。

その際に棚戻しを隣の棚に戻し間違える、賞味期限を確認せず棚を間違える、上下を間違えるなどして在庫が合わないといったケースもよくある話です。

仕入先によるミス

仕入先から納品された在庫数が必要数と違う場合も棚卸差異の原因の一つとして考えられます。仕入先の企業の管理体制が人力であると、ヒューマンエラーによりどうしても棚卸差異が発生する確率が高くなるでしょう。

それ以外にも、納品書や請求書などの書類が遅延することで納品数や在庫をチェックできず、棚卸差異が起こりやすくなってしまいます。

棚卸におけるミス

棚卸作業のときにカウントを間違えていると棚卸差異として反映されます。入出庫や仕入れ先にミスがなくても、棚卸作業にミスがあれば棚卸差異は防げません。

特にミスが発生しやすいのは、実際に現物を確認する「実地棚卸」の作業時です。実地棚卸の際は複数人で作業を行うこともあるため、重複や数え間違いが起こりやすくなります。その際は、マニュアルの作成や確認方法の策定などの対策が必要になるでしょう。

在庫管理の整備不足

管理ルールを定めずに在庫管理を現場社員の裁量に任せておくと在庫数のズレが生じやすく正しい数字がわからなくなります。

例えば、営業の社員が今月の売上を来月に回したいからと売上をその月に計上しなかった場合、帳簿在庫と実際の在庫にズレがでてきてしまいます。

また、在庫の保管場所が明確に決定していないと、棚卸の時に商品や製品が見当たらず、帳簿在庫と合わなくなります。保管時の置き方やルールが決まっていないことで、在庫が紛失、破損してしまう恐れもあるでしょう。

返品、製品の破損、サンプルとしての出荷等通常の販売ではないイレギュラーな対応もルールを決めて管理しないといけません。倉庫内のセキュリティ対策が取られていない場合は盗難のリスクも考えられるため、整備の見直しも検討すると良いでしょう。

棚卸差異が発生した場合の影響

棚卸差異とは、帳簿上の在庫と実際の在庫を比べた際に、実際の在庫数が少ない「棚卸差損」、実際の在庫数のほうが多い「棚卸差益」の2つに分かれます。

それぞれどのような影響が起こるのか、以下で解説します。

キャッシュフローへの影響

在庫数が合っていないと、発注数の増減によって在庫を無理やり合わせようとするので、帳簿上の在庫が足りなくなり、それを埋めるために発注し過剰在庫になるという問題が起こります。

在庫過多は、利益を生み出さないことが多く、キャッシュフローの悪化という事態になります。売れる見込みが薄い在庫は管理や廃棄等にコストがかかるので、企業にとって大きな損害となります。

したがって、在庫数が合わない状況というのは、様々なコストがかかり企業経営にマイナスです。

顧客満足度の低下

在庫数が合っていないと物流自体に時間がかかります。在庫があると思って販売中にしたが、実際にはなかったということになれば、お客様へのお手元に商品が届くのが遅くなってしまいます。商品の到着までに時間がかかれば、顧客満足度が下がってしまうでしょう。

その際、帳簿在庫自体に信用性がなくなってしまうため、在庫を担当者へ確認する必要が出てきてしまいます。余計な手間がかかり、顧客への対応も遅くなってしまうでしょう。

インターネット通販でよくあるケースとして、売り上げが上がっても商品がなく、お客様に欠品の連絡を行わなくてはならないといったケースがあります。出荷の時点で在庫がないことが明らかになると、納期に間に合わず顧客は不満を感じてしまうでしょう。

多少の棚卸差異であっても、結果的に企業やブランドとしての信頼が下がる原因につながります。

業務効率の悪化

適切な在庫管理ができていないと、在庫の再確認や原因追求などの不要な業務が発生します。

不要な業務に時間がかかってしまい、本来時間をかけたい業務に時間を割けられないことで、ほかの作業が遅れてしまったり、残業によって無駄なコストがかかったりといったデメリットがあります。

棚卸差異が発生したときの処理方法

棚卸が一致しない場合、再度実地棚卸を行ったうえで、棚卸差異がある際は帳簿上の数字に合わせるようにしましょう。実在庫がマイナスの場合は差損、実在庫がプラスの場合は差益となります。それぞれの対策方法は、以下のとおりです。

  • 棚卸差損:「棚卸減耗費」という勘定科目で仕訳、帳簿在庫から金額を引く
  • 棚卸差益:「繰越商品」という勘定科目で仕訳、帳簿在庫へ金額を足す

棚卸差異が発生したときは、在庫の差異がなぜ起きたのか原因を調査し、今後の対策を考える必要があります。 

棚卸差異を改善するための方法

棚卸差異は無駄な作業が増えるだけではなく、さまざまなリスクが伴うため、改善する必要があります。改善するための方法を5つ紹介するので、簡単なものから取り組んでみましょう。

棚卸差異率を確認する

棚卸差異率とは、帳簿に記載された在庫数と実在庫数の差異率を指します。棚卸差異率が高い場合は早急に対策を取らなければなりません。棚卸差異率は次の計算式で算出が可能です。

  • 棚卸差異率=棚卸における差異量(実在庫数-帳簿上の在庫数)÷帳簿在庫数×100

棚卸差異率が5%以下だと許容範囲で、2%を目標数値として設定されることが多いです。

例えば、実在庫数が90、帳簿上の在庫数が100の場合、在庫差異率は(実在庫数90-帳簿上の在庫数100)÷100×100=-10%。つまり、実在庫数が帳簿上の在庫数より10%少ないことを意味します。つまり、このケースでは許容範囲外であることが分かります。

逆に、実在庫数が100、帳簿上の在庫が90の場合、(実在庫数100-帳簿上の在庫数90)÷100×100=10%。つまり、実在庫数が帳簿上の在庫数よりも10%多いことを意味しています。

このように、棚卸差異率はプラス、マイナスになるパターンがあり、それぞれ実在庫数と帳簿のどちらが多いのかを表しています。

在庫差異報告書を作成すると、棚卸差異の発生状況を把握できます。在庫差異報告書の数値を分析することにより、倉庫全体の課題か作業場ごとの課題かがわかるでしょう

倉庫内の作業ルールを設定する

ミスを減らすためには倉庫内の各工程に適したルールを設定します。作業ルールを作成することで、ミスが減るだけでなく、作業効率のアップも見込めるでしょう。また、新しく棚卸を行う従業員の教育にも役立ちます。

破損した在庫の取り扱いや、サンプルの入荷などのイレギュラーなものについても対処法を予め決めておくことも大切です。

棚卸方法を変える

棚卸し方法には循環棚卸と一括棚卸の2パターンがあります。

  • 循環棚卸:場所や在庫のジャンルごとに棚卸を行う方法
  • 一括棚卸:すべての在庫を対象に一度に棚卸を行う方法

在庫や倉庫の状態によって適した方法は異なるため、現在の業態に合ったものに変更してみましょう。

また、当日の入出庫分を確認する日次棚卸も導入することで、差異を最小限にすることが可能です。日次棚卸では棚卸をこまめに行うため、ミスした場合も原因がわかりやすいといったメリットがあります。

みなし出庫の導入

出庫時に伝票処理をせず、在庫数量の減少分を出荷したものとみなす「みなし出庫」の実施も、棚卸差異を起こさないための対策として挙げられます。

みなし出庫は実際に減少した数量を記録するため、ヒューマンエラーによる棚卸差異が発生しません。しかし、数量や品目、出荷先を把握できないため、通常の伝票処理に代わるような別の記録方法が必要です。 

WMSの導入

在庫管理システムを導入することで、棚卸を効率化でき、棚卸差異も改善できます。

在庫管理システムを使えば、在庫情報をバーコードで管理し、ハンディターミナルで簡単に確認が可能になります。そのため、毎回人間の目で確認する必要がなく、棚卸差異の発生も防げます。

また、毎回確認する手間を省くことにより、倉庫業務の効率化も見込めます。倉庫業務がスムーズに終われば、人件費などのコスト削減にもつながります。 

まとめ

棚卸差異は、業務効率の悪化や顧客満足度の低下などさまざまなリスクにつながります。棚卸差異を起こさないためには、原因を追求して対策を行う必要があります。

対策としては、倉庫内の作業ルール作成やみなし出庫、WMSの導入などが効果的です。自社での対策が難しい場合、アウトソーシングの導入も手段の一つです。

浜松委托運送では、誤出荷ゼロの管理体制で高品質の在庫管理が可能です。アウトソーシングをお考えの方は、ぜひお気軽にご相談ください。

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