商品やサービスの売上を拡大するためには、適切な顧客分析を行うことが重要です。特にEC販売では、顧客との接点がインターネット上になります。顔の見えない顧客に対し、どのようなアプローチが最適なのかを分析によって導き出さなければなりません。このとき活用できるのが、CPM分析です。
CPM分析は顧客分析の方法の一つであり、顧客の属性や購買行動の分析を行うことで、顧客を理解できます。分析結果を活かして最適なマーケティング施策を行えば、商品やサービスからの離脱を防ぎ、優良顧客を育成することにつながるでしょう。
この記事では、CPM分析の重要性や進める際のポイントを解説します。
■この記事でわかること
- CPM分析の意味・重要性
- CPM分析の方法
- CPM分析を進める際のポイント
目次
CPM分析とは
CPM分析とは「Customer Portfolio Management(カスタマー・ポートフォリオ・マネジメント)」の略であり、顧客分析手法の一つです。CPM分析の定義、同じく顧客分析手法であるRFM分析との違いについて説明します。
CPM分析の定義
CPM分析は、顧客分析の方法の1種です。売上や利益の拡大を目指すためには、顧客分析が欠かせません。顧客分析は、自社を利用してくれた顧客の属性や購買行動の分析を行い、顧客を深く理解するために行われるものです。分析の結果、自社に必要な施策を検討するのに役立つデータが得られるでしょう。
CPM分析は、商品・サービスの購入頻度や購入金額が高い優良顧客を育成(ナーチャリング)するための分析方法です。特にEC通販事業などでは、CPM分析を用いた顧客育成の施策がとられるケースも珍しくありません。
分析にあたっては、取引実績のある既存顧客を「累計購入金額」「在籍期間」「離脱期間」という3つの軸に基づき、属性ごとで購入金額や期間による10のグループに分類する必要があります。
CPM分析の目的は、自社商品やサービスのリピーター、優良顧客を育てるために効果的なマーケティング施策を打つことです。

一般的に、新たに顧客を獲得するよりも既存顧客を育成する方がコストが発生しません。CPM分析による顧客分析を行うことは優良顧客を育成し、ビジネスの継続性を高めます。
RFM分析との違い
RFM分析は「Recency、Frequency、Monetary」の頭文字を取った略称であり、CPM分析とは補完関係にある顧客分析の手法です。RFM分析では、以下3つの軸で顧客分析を行います。
- Recency:最後に注文をした日付からの経過日数・直近の購入日
- Frequency:購入頻度・購入回数
- Monetary:累計の利用金額・購入金額
先述したCPM分析は、在籍期間や離脱期間も含めた長期的な視点で顧客分析を行うのに対し、RFM分析は今現在ロイヤリティが高い顧客層を分析するのが特徴です。RFM分析は、CPM分析と比較すると短期的な視点に基づいた分析といえるでしょう。
CPM分析を理解するためには、RFM分析の理解が必要です。
CPM分析の重要性
CPM分析が重要視される理由の一つが、優良顧客の育成による事業の安定を図れるということです。事業を安定させるためには、既存顧客を優良顧客に育成することが効果的といえます。
次に、CPM分析ではリードナーチャリングが可能であるという点もポイントです。リードナーチャリングとは、リードと呼ばれる見込み客の購買意欲を高めて、商談や受注などへつなげるためのマーケティング活動を指します。CPM分析では、顧客行動に合わせた適切なアプローチを行い、効果的に商品やサービスの購入を促すことが可能です。
新規顧客の獲得は既存顧客の育成よりも難しく、多額のコストが発生します。一般的に新規顧客の獲得は、既存顧客の維持費と比較して5倍のコストが必要とされており、多くのリソースを割かなければなりません。加えて、既存顧客が売上の8割を生み出しているともいわれています。このことから、既存顧客を優良顧客に育成し売上を伸ばすほうが、事業の安定につながりやすいといえるでしょう。
CPM分析で用いる10の顧客分類分析の考え方
CPM分析の考え方では、顧客を10のグループに分類可能です。下表のように、顧客グループを現役顧客と離脱顧客の2つに大別し、そのうえで初回客から優良客まで属性を各々5つに分類します。
顧客グループ | 現役顧客 | 離脱顧客 |
---|---|---|
初回客 | 一定期間内に初回購入の実績がある顧客 | 一定期間内に初回購入実績があるが、離脱した顧客 |
よちよち客 | 一定期間内に2回以上購入した実績のある顧客 | 一定期間内に2回以上購入実績があるが、離脱した顧客 |
コツコツ客 | 一定期間内で安定的なリピート購入実績がある顧客 | 一定期間内での安定的なリピート購入実績があるが、離脱した顧客 |
流行客 | 短期間に一定金額以上の購入実績がある顧客 | 短期間で一定金額以上の購入実績があるが、離脱した顧客 |
優良客 | 長期間にわたって一定金額以上の購入実績がある顧客 | 長期間にわたって一定金額以上の購入実績があるが、離脱した顧客 |
現在進行形で自社を利用してくれている現役顧客に対し、離脱顧客はすでに購入をストップしている顧客です。これらのグループごとに適切な施策を考え、現役顧客であれば離脱を防止、離脱顧客であれば購入再開のためのフォローを入れる必要があります。

CPM分析を行う利点は、数多くの顧客を分類することで、各々の属性に応じた 適切な施策を打てることにつながります。
CPM分析を進める際のポイント
CPM分析を進める際には、以下の3つのポイントを念頭に置いておきましょう。
- 目的の明確化
- 目的に合わせた分析手法の選択
- 継続的な分析
順に詳しく解説します。
目的の明確化
CPM分析を行う前に、まず「なぜ顧客分析を行う必要があるのか」という目的の明確化が大切です。目的が決まらないことには適切な分析手法も定まりません。顧客分析の目的としては、大きく以下3パターンが考えられます。
- 現状の顧客層に対する解像度を上げるため
- 新しい施策を打ち出す際の顧客ターゲット層を見極めるため
- マーケティング施策の結果を評価するため
顧客層の解像度の高さは、BtoBマーケティングの戦略や施策立案において重要な要素であり、顧客層の状況や課題が鮮明に見えていることを意味します。
顧客データの収集方法の整備
CPM分析を行ううえでは、顧客のグループ分けが重要な意味を持ちます。このとき、顧客ごとの購入回数・購入金額・最終購入日からの経過日数を正確に把握していることが必須です。正確なデータを把握するためには顧客データの一元管理が欠かせません。
この場合、CRM(Customer Relationship Management:カスタマーリレーションシップ マネジメント)などの顧客管理ソフトを導入し、データが収集・分析できる環境を整備しましょう。物流倉庫などをアウトソーシングという形で利用している場合は、物流会社から出荷データを提供してもらうことも可能です。
目的に合わせた分析手法の選択
効果的な分析結果を得るには、目的に合わせた分析手法を選択する必要があります。自社の顧客の特徴や優良顧客の割合を知るためには、購買行動データをもとにしたCPM分析が便利です。
新規顧客の獲得に向けた施策を実施したい場合、自社の顧客情報だけで行うことは難しいため、競合他社や市場全体の分析も必要になります。こうした場合にはセグメンテーション分析が有効でしょう。例えば、STP分析は、市場に存在している不特定多数の顧客を年齢・職業などの属性ごとで分類する分析手法です。
継続的な分析
CPM分析の精度を上げるためには、継続的にデータを収集し、分析を続けることが大切です。顧客の属性には、初回客・よちよち客・コツコツ客・流行客・優良客といった時間の経過とともに変化する側面があります。このため、一度CPM分析を実施しただけでは、分析の精度が低く、顧客の全体像を把握することも困難といえるでしょう。
CPM分析は中長期的な経営計画を立てるのに活用される手法であり、顧客の購買行動の変化を追ったうえでの長期的な分析が必要です。なお、CPM分析は中長期の分析のみならず、季節トレンドやマーケティング施策といった季節要因・イベント前後の顧客の反応を定量的に把握することにも活用できます。

物流センターの出荷データは、出荷先・数量・出荷頻度などが含まれた極めてリアルかつ貴重なデータになります。ERPソフトを導入している企業では、こうしたデータを 容易に入手することも可能でしょう。
まとめ
CPM分析は、自社との取引実績がある顧客をグループ分けして分析を行う手法です。CPM分析を行うことで、リピーターや優良顧客育成のための効果的なマーケティング施策を打てるようになります。特に、EC通販事業では顧客育成のためにCPM分析が活用されるケースも少なくありません。
また、顧客分析の方法は、CPM分析のほかRFM分析やセグメンテーション分析などいくつもあります。より深く分析を行いたいものの、物流業務にリソースを割かれすぎてしまっているなど、EC通販事業にお悩みをお持ちの方は当社へご相談ください。
浜松委托運送では、自社倉庫を活用した物流業務のアウトソーシングを承っています。自社開発の倉庫管理システムを導入していることから、お客様への出荷実績をはじめとしたデータを正確に把握することも可能です。
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