ラストワンマイルとは?問題点や解決策を解説

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コロナ禍におけるネットショッピングの需要の高まりや、それに伴うEC市場の急激な拡大により、物流業界ではさまざまな変化が求められています。なかでも「ラストワンマイル」の改善は、物流業務の効率化において重要な意味を持つ要素といえるでしょう。しかし、ラストワンマイルを向上させるにあたっては、さまざまな課題もあるのが実情です。

本記事では、ラストワンマイルの重要性や問題点、課題解決に向けた取り組みについて解説しています。物流業務の改善をお考えの方は、参考にしてみてください。

 

■この記事でわかること

  • ラストワンマイルが重要視されている理由
  • ラストワンマイルの課題・問題点
  • ラストワンマイルの課題解決に向けてできること

 

ラストワンマイルとは

ラストワンマイルとは

物流業界におけるラストワンマイルとは、物流拠点とお客様との最終接点を意味します。

ラストワンマイルを直訳すると「最後の1マイル」ですが、物理的な距離を指しているわけではありません。通信業界であれば生活者や企業に対して通信接続を提供する最終区間、営業では顧客が購入に至る決め手といったように、いずれの業界でも顧客との最終接点を表しています。

ラストワンマイルが重要な業種として、ECサイトを活用した宅配やフードデリバリー、ネット通販などが挙げられるでしょう。特にネット通販では、「安く手に入れたい」「明日届いてほしい」といったお客様のニーズに合わせて、送料無料・翌日配達などのサービスを展開することで、ラストワンマイルの改善が見込めます

ラストワンマイルが重要視されている理由

1990年代にパソコンやスマートフォンの普及率が上がり、通信インフラが整備されたことによって多くのITビジネスが誕生し、それに伴いECサイトが普及していきました。EC市場へ参入する事業者が増えて競争が激化したことで、送料無料や翌日配達などの物流サービスで差別化を図る事業者も増加しています。その結果、物流サービスにおいてもラストワンマイルが重要視されるようになっています。

また、2020年に新型コロナウイルスの感染が広がった際には外出を控える人が多くなり、自宅で気軽に利用できるECサイトの利用が活発化しました。昨今はさまざまなデリバリーサービスも誕生し、人々がモノやサービスを手に入れるまでの時間が早く、簡単になっているといえるでしょう。こういった社会のニーズに合わせて、ラストワンマイルの向上が求められています。

台田 雄樹
台田 雄樹

10年ほど前までは、注文した商品が手元に届くまでに2、3日、それ以上の日数を要していました。しかし、今では翌日配送を当たり前のように行っている会社もあります。

このようなサービスが実現したのも、物流企業がハード面やシステム面の強化、改善に取り組み続けてきたからです。

ラストワンマイルの業務効率化における問題点

ラストワンマイルの向上を目指すうえで、物流企業を悩ませる3つの問題点があります。

  • 宅配便貨物の取扱量の増加
  • ドライバー不足
  • 再配達の増加

これらの課題について、順に詳しく解説します。

宅配便貨物の取扱量の増加

参照:令和元年令和2年度令和3年度令和4年度(いずれも国土交通省の資料より)

国土交通省によると、宅配便取扱個数は年々増加傾向にあります。コロナ禍にあった令和2年度は、前年度と比較して5億1,298万個(約11.9%)も宅配便の数が増加しており、それ以降も年々増加傾向にあることがわかりました。

宅配便貨物の増加に伴って、トラックドライバーの労働時間が増えるということも考えられますが、2024年問題による労働時間の制限によりそれも難しくなるでしょう。労働基準法の改正に伴い、2024年4月以降、ドライバーの時間外労働は年間960時間までと定められました。これをふまえ、今後いかに配送業務を効率化できるかが求められています

ドライバー不足

ラストワンマイルの向上には、ドライバーの存在が必要不可欠といえるでしょう。しかし、物流業界のドライバー不足は年々深刻化しており、国でも問題視している課題の一つです。

実際に、厚生労働省が発表した令和5年7月の「一般職業紹介状況」では、自動車運転従事者の有効求人倍率は2.63倍と、募集数に対して数が足りていないことがわかっています。求職者が少ない理由として、いまだ「ドライバーは長時間労働・低賃金」といったイメージが世間で浸透しているという問題が挙げられるでしょう。

現在では国が若手ドライバーや女性ドライバー、フリーターなどの募集を積極的に呼びかけており、ドライバー不足を解消しようと問題に取り掛かっている最中です。ドライバーの労働環境改善を進める企業もありますが、まだまだ課題も多く、物流業界全体で見れば課題解決は道半ばの状態といえます。

台田 雄樹
台田 雄樹

24年4月から実施されるトラック運転手の時間外労働の制限強化により、更なるドライバー不足の深刻化が予想されます。まずは、取引のある物流業者へ当規制による影響を確認しましょう。必要に応じて、配送納期の見直しや依頼先の物流業者を増やすといった対応が荷主側に求められます。

再配達の増加

ラストワンマイル向上の障壁となりうるのが、再配達貨物の増加です。宅配便貨物が増えるほどドライバーの負担も増すことから、国で再配達の削減を呼びかけています。

国土交通省の調査によれば、令和5年4月の再配達率は約11.4%です。前年同月と比べて約0.3%下がっているものの、物量が増えていることを考えると積極的な改善が必要だといえるでしょう

事業者にとっても、再配達による車両燃料費や人件費といったコストの負担が増えることは無視できない課題であり、再配達削減には複数のメリットがあります。また、再配達が遅くなってしまったり、再配達によって他の荷物の配送が遅れてしまったりすれば、EC事業者の印象にも影響を与えかねません。

これらの背景から、再配達削減によるラストワンマイルの業務効率向上が求められています。

ラストワンマイルの課題解決に向けてできること

ラストワンマイルの業務効率化を考えていても、現状の人手不足に反して貨物は増加傾向にあり、どのように対策すべきか頭を抱えている企業も多いでしょう。ここからは、物流の課題解決に向けてできる取り組みを紹介します。

受け取り場所を増やす

荷物の受け取り場所を増やすことで、ドライバー不足や再配達の増加といった問題の改善につながります。また、「好きなときに・希望する受け取り方法で・確実に受け取れる」といった状況はお客様目線でのメリットもあるため、ラストワンマイルの向上にも役立つでしょう。

ドライバーがお客様に直接届ける以外にも、以下のような配達手段があります。

  • 宅配ロッカー
  • 宅配ボックス
  • 置き配
  • コンビニエンスストア
  • 店頭受け取り
  • 職場受け取り
  • 最寄駅の宅配便ロッカー

 

宅配ロッカーや置き配などを利用すれば外出時に限らず、家にいるときでも睡眠・入浴時などと時間が重なって受け取れないケースを防げます。また、職場や最寄駅、コンビニエンスストアでの受け取りは置き配と比べると安全性も高く、平日仕事で忙しい方も受け取りやすいでしょう。

配送拠点の集約

物流拠点が多いと、倉庫の管理・維持費用やドライバーの業務効率など、コスト面での負担が増えてしまいます。分散している配送拠点をできる限り集約すれば、配達業務の効率化と倉庫のコスト削減につながるでしょう。

配送拠点の集約に伴い、活用されているのが共同配送です。共同配送とは、異なる荷主から商品を積み合わせ、同じ納品先へと配送する方法のことです。共同配送を行うことで、トラックの稼働数を抑えられるため、ドライバーの業務効率化も期待できるでしょう

物流管理システムの活用

物流業界は、人手不足かつ貨物量が増えている状態にあるため、効率的な配送が求められます。配送の効率化を実現させるには、物流管理システムを使用するのも一案です。

例えば、輸配送管理システム(TMS)を使用すれば、物流センターから届け先までのルートやスタッフの割り当てを最適化できるため、ラストワンマイルの業務効率化が可能になります。倉庫管理システムや輸配送管理システムを導入して活用することで、業務効率の最適化はもちろんのこと、人件費や燃料費の削減にもつながるでしょう。

まとめ

物流の需要は今後も高まることが予想されるなか、ラストワンマイルもこれまで以上に重要視されるようになるでしょう。ラストワンマイル向上のためには、荷物の受け取り場所を増やす、配送拠点を集約する、物流管理システムを導入するなどの取り組みにより、業務効率化を目指すことが欠かせません。

ただし、宅配便貨物の増加やドライバー不足などの課題により、すでに物流業務の負担を感じているのであれば、物流業務を委託するのも一つの解決策といえます

浜松委托運送では、自社の保税倉庫を所有しており、輸入品でも入荷から出荷までを一気通貫で対応可能です。また、関西と関東の中間に位置する浜松市に拠点があることから、翌日配送など短納期のご依頼にもお応えできます。

通販物流サービスに関しても、宅配便会社と連携しスピーディかつ高品質な作業を実現しているため、アウトソーシングをお考えの方はぜひ浜松委托運送にご相談ください。

 

台田 雄樹
台田 雄樹

ラストワンマイルの強化には、十分な人的リソース、倉庫やトラックといったハード面、そして、業務を効率化する物流システムが揃っている会社と協業して取り組むことが大切です。

 

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