物流業界の現状が抱える課題と解決策

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2024年問題に向けて自社でどのような取り組みを行うべきか、疑問を抱いている方も多いでしょう。

近年は通販やフードデリバリーなどが人々の生活に定着し、EC事業の需要は増加の一途をたどっています。その一方で、働き方改革の影響により輸送能力が低下し2024年以降「モノを運べなくなる」とも言われており、物流業界全体での対策が急がれているのが実情です。

 

本記事では、物流業界が抱えている課題とその解決策について解説します。自社でできる取り組みを考える際のヒントにしてみてください。

物流業界の現状と課題・問題点

物流業界が現状抱えている問題には、以下のようなものが挙げられます。

 

  • ドライバーの人手不足と高齢化
  • 過酷な労働環境
  • EC需要増加に伴う予備人員・車両の確保
  • 燃料価格の高騰

 

物流ビジネスに携わるうえで、どの課題も他人ごとではありません。それぞれの問題点について事例を交えながら解説します。

ドライバーの人手不足と高齢化

ドライバーの人手不足と高齢化

出典:経済産業省ウェブサイト(https://www.mlit.go.jp/common/001242557.pdf )P4

物流業界の恒常的な問題として、ドライバーの高齢化と人手不足があります。物流業界の需要・市場規模は拡大していますが、その反面ドライバーをはじめとして働き手は減少し続けている状況です

 

ドライバー年齢別の割合を見ると、トラック業界で働く人のうち約45%は40~54歳で、29歳以下の若年層は9.1%と、全産業平均の16.3%と比べて低いことがわかります(※)。また、女性の進出率は2.5%と全産業と比べても極めて低いと言えます。

 

現在中核を担っている40~54歳のドライバーも、いずれは定年などのタイミングで退職するでしょう。若年層の雇用を増やさなければ、今後さらに人手不足は加速していきかねません

※参考:トラック運送業の現状等について

過酷な労働環境

トラックドライバーの労働条件

出典: 経済産業省ウェブサイト(https://www.mlit.go.jp/common/001242557.pdf)P2

トラックドライバーが置かれている過酷な労働環境も、物流業界の課題の一つです。そもそもトラックドライバーは肉体労働が主となるハードな仕事ですが、さらに労働時間が長いことも働き手の減少に拍車をかけています。

 

トラックドライバーの年間労働時間は全産業の平均よりも2割ほど多く、年間の所得額は全産業平均よりも1~2割低い傾向です。長距離ドライバーの場合、数日間家に帰れないケースも珍しくありません。その背景として、生活水準を下げないため長距離運転せざるを得ないということもあります。

 

長時間労働であるうえに所得も低く、労働条件としては厳しいと言えるでしょう。このように物流現場では過酷な労働環境が常態化しており、業界全体で改善を進める必要があります。

Hiroki
Hiroki

例えば、関西と関東を往復で運転する場合、次のような日程になります。月曜日夜に関西を出発して、火曜日朝に関東の配達先へ配達します。半日ほど休憩した後、火曜日夜に関東を出発して、水曜日朝に関西へ到着します。この場合2泊3日です。「関西から東北」、「関東から九州」のようにさらに長距離の配達になると、1週間近く家に帰れないこともあります。

EC需要増加に伴う予備人員・車両の確保

EC市場の急速な拡大に伴い、人員と車両を過剰に持たなければならない状況も深刻化しています。個人宅に向けた配送件数は年々増加傾向にあり、日付指定や時間指定の配達など細かなニーズにも対応しなければなりません

 

こうしたニーズに対応するため、配送前には綿密な配送ルートの作成が必要です。しかし、さまざまな事情で受取人不在のケースも多くあります。再配達件数の増加はそのままドライバーの負担増になるでしょう。

 

小口配送・配達回数の多頻度化に合わせて、消費者の利便性のために物流拠点の細分化が起きています。こうしたことから各拠点で予備車両や余剰人員を持たざるを得ず、予備車両の増加は積載率の低下として反映されている状態です。

 

燃料価格の高騰

原油価格の推移

画像引用|https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000406.000043465.html

物流業界では、燃料価格の高騰への対策も大きな課題の一つです。2023年10月からは石油元売り業者へ政府からの補助金も止められるため、業界を問わずさらなる燃料価格の高騰が懸念されるでしょう。

 

燃料の価格高騰は物流業界全体の利益圧迫に大きな影響を与えており、燃料価格が1円上がるとトラック業界全体で150億円負担が増えるとも言われています。国内輸送の92%を担っているトラック輸送はまさに危機的状況です。

 

燃料価格の高騰は日本のみの問題ではなく、世界情勢によって大きく変化します。燃料価格の高騰に伴い配送コストも増加するため、配送料金の見直しも必要です。しかし、荷主への料金値上げは簡単にできることではありません。

 

物流業界が抱える課題の解決策

物流業界が抱える課題の数々は、技術革新によって解決できる可能性があります。例えば次のような方法が考えられるでしょう。

 

  • 物流システムの導入・DXによる効率化
  • 再配達の防止
  • 物流総合効率化法による流通の効率化
  • 物流のアウトソーシング

 

それぞれの対策について具体例を挙げながら解説します。

物流システムの導入・DXによる効率化

物流業界では、現状抱えているさまざまな課題解決に向けて新しい技術の開発・導入を進めています。ここでは物流システムの導入やDXによる業務効率化を中心に見てみましょう。

 

スマートロジスティクス

スマートロジスティクスとは、ITの新技術を利用して効率化された物流を指します。今まで人の手で行っていた業務管理にシステムを導入し、その業務負担を大きく減らすことが可能です。

 

倉庫管理においてWMSは倉庫業務改善の代表例と言えます。作業が効率化されることはもちろん、スタッフの動きや在庫の状況、荷物のリアルタイム追跡、配車・ルートの最適化を図ることが容易になるでしょう

 

浜松委托運送では、多くの経験と実績を元に独自のシステムを導入し、お客様個別のご要望に対して最適に答えられるような環境を整備しています。

 

ドローン・自動運転の活用

日本ではまだまだ実現化に向けた土台作りの段階ですが、アメリカでは企業の支援を受けてAIを搭載したドローンによる宅配が一部で始まっています。うまく活用できれば、トラックで行くことが難しい山間部への配送も可能になるかもしれません。

 

今後日本でも安全性に対する懸念事項が解決し、法整備がされれば、物流業界でAI搭載のドローンが活躍する可能性はあります。自動運転やドローンが導入された場合、労働力不足の解消・配送時間の短縮・コスト削減が期待できるでしょう

 

Hiroki
Hiroki

日本でも自動運転やドローンによる配達の実用化に向けた取り組みが進んでいます。

自動運転については、2023年4月1日に「道路交通法の一部を改正する法律」が施行され、届出制により自動配送ロボットによる配送サービスが可能になりました。まだごく限られた範囲ですが、Panasonicが神奈川県や東京都でサービスを開始しています。

また、日本郵便や佐川急便はドローンによる荷物配達の実証実験を進めています。

再配達の防止

ドライバーの負担を大きくしている要因に、再配達があります。再配達を減らす努力は各会社でも取り組んでいるものの、目覚ましい効果は得られていません。ここでは再配達防止のための対策について解説します。

 

宅配ボックスの設置

宅配ボックスを設置し、再配達の必要性を減らしていくことも大切です。共働き世帯が増加したことで特に平日の在宅率は低く、宅配ボックスを設置するマンションやアパートなどの集合住宅も増えました。

 

国土交通省の調査によると、2022年10月時点での宅配再配達率は11%ほど(※)で、現在は7.5%まで削減を目指しています。この一環として、宅配ボックス設置に関する助成金制度を整えるなど政府も支援を行っている状況です。

 

再配達率が下がれば、ドライバーの労働環境の改善につながるでしょう

 

※令和4年10月の宅配便の再配達率は約11.8%

ヤマト運輸の施策事例

ヤマト運輸の施策事例として、荷物の到着日時をLINE・メールでお知らせするサービスがあります。受け取り場所の変更などに対応しており、事前通知と日時変更を合わせた一度目の配達完了率が約95%、場所変更も行うとほぼ100%の結果が得られました。

 

受け取る側の利点として、荷物到着前に「お届け予定通知」で受け取り日時を確認できるうえに、事前に日時と場所の変更が可能です。全国に5万ヶ所以上ある受け取り拠点を利用することもできます。

 

受け取りの選択肢拡充として、置き配サービスに対応している点も特徴です。ヤマト運輸と連携しているオンラインショップからの荷物は、対面または置き配の選択ができるほか、デジタルキーを活用したオートロック付きのマンションでの置き配にも対応しています。

物流総合効率化法による流通の効率化

物流総合効率化法

出典:経済産業省ウェブサイト(https://www.mlit.go.jp/common/001476255.pdf)

国土交通省が推進する物流総合効率化法による支援を受けることも一つの手段です。同省は「流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律(物流総合効率化法)」に基づき、物流業務の効率化を支援しています。

 

輸送網の集約

物流総合効率化法における鍵を握るのが、輸送網の集約です。これまでの輸送は倉庫や流通加工場、荷捌き用施設などに分散されていて、各施設へ輸送する非効率さが問題とされてきました。

 

これを改善するために、各運送会社でバラバラだった輸送網をまとめて集約する案が考えられています。輸送網の中心となる部分に輸送連携型倉庫を設置して、一度そこに荷物を集めてからそれぞれの納品先へ輸送する方法です

 

国土交通大臣に認定を受けると、補助や税制特例などの支援を受けられます。中小事業者の場合、長期無利子貸付制度や信用保険制度の限度額を拡大するなどの手厚い措置を受けることが可能です。

 

モーダルシフト

モーダルシフトとは、物流業務をトラック輸送だけに頼らず、一部を船便や鉄道に置き換える方法を言います。この方法ではドライバーが長距離移動する必要がなく、多くの貨物を積載できるうえに輸送コストの削減になる点がメリットです。

 

モーダルシフトへの切り替えは、人員不足の解決やCO2の削減にもつながります。浜松委托運送も、モーダルシフトに積極的に取り組んでいる事業者です。また、鉄道コンテナ輸送の免許を取得していることから、当社では全国の鉄道コンテナを利用できます。

 

共同配送

共同配送の取り組みの推進も、物流総合効率化法におけるポイントです。従来は積載率が低いまま複数のトラックで納品することもありましたが、数社の荷主の荷物を積み合わせて配送することにより、効率的な輸送の実現を目指せます。

 

共同配送を行う場合、各社のトラックが共同倉庫に商品を一括納品し、そこから一台のトラックで納品先へ配送する形です。この取り組みによって人手不足の解消や積載率の向上、CO2削減などが期待できます

Hiroki
Hiroki

従来から、食料品、医薬品等の業界では共同配送が行われていました。近年の傾向としては、「飲料」と「紙製品」のような異業種間でも連携して共同配送をする動きが盛んになっています。

物流のアウトソーシング

上記で挙げた物流管理システムを導入するほかに、物流のアウトソーシングを行うことでも業務全体のコスト削減を見込めるでしょう。特にEC運営企業は自社にノウハウがない場合、物流をアウトソーシングすることで効率化が目指せます。

 

浜松委托運送ではEC販売に関する多数のノウハウを持っており、流通加工から配送まで幅広く対応可能です。自社の中核業務に専念するべく物流のアウトソーシングを検討している方には、ご要望に沿う形でのサービスご提案ができます。

まとめ

日本の物流業界が抱えている現状の課題と、その解決策について解説しました。物流の需要は年々高まっているものの、ドライバーの過酷な労働環境や人手不足、燃料価格の高騰などさまざまな課題が浮き彫りとなっています。

 

物流ビジネスに携わる以上、これらの課題と主体的に向き合い、物流システムの導入・DXによる効率化をはじめとした対策を一つひとつ検討していく必要があるでしょう。

 

浜松委托運送は、システム導入によって物流業界が抱えるさまざまな課題の解決を目指し、高品質かつ効率的な物流業務に取り組んでいます。物流のアウトソーシングを検討している事業者の方は、ぜひ一度ご相談ください。

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