物流システムとは?効率化するシステムのメリットと注意点を解説

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物流システムは、物流における6つの基本活動の最適化を実現するための仕組みです。またシステムの導入によってサービスの向上やコストの削減にもつながります。

しかし、物流システムの種類や機能選定を理解せずに導入して失敗に終わることも少なくありません。自社に必要な物流システムを選ぶ際は慎重に検討する必要があります。

この記事では物流システムの種類やメリット、導入する流れを紹介します。物流システムの選び方についても紹介していますので、システムを導入を考えている方は、ぜひ最後までご覧ください。

 

■この記事でわかること

  • 物流システムの種類
  • 物流システムの選び方
  • 物流システムを導入するメリット・デメリット

 

物流システムとは

物流システムとは

物流には、6つの基本活動(輸送・保管・荷役・包装・流通加工・情報)があります。物流システムは、これらの基本活動の最適化や効率化を実現するための仕組みです

個別の活動を最適化しても物流全体の最適化になるとは限りません。そのため、物流システムを効果的に導入するためには、物流工程全体の見直しを行い、現状の課題や物流システムで解決したい問題を把握することが大切です。

また、物流システムの導入は、ロジスティクスの改善にも役立ちます。物流機能を含む産地から消費地まで全体の最適化を目指すのであれば、ロジスティクスの定義や意味を理解したうえで、物流システムの導入を検討してみてください。

物流を効率化するシステムの種類

物流システムは大きく分けて倉庫管理システム(WMS)と配送管理システム(TMS)の2つに分けられます。それぞれの機能や特徴は下記の通りです。

倉庫管理システム(WMS)

倉庫管理システム(Warehouse Management System、WMS)は、倉庫内の入庫・出庫管理、人員管理に特化したシステムです

倉庫管理システムによって倉庫内の業務効率化が進めば、在庫管理の不備による機会損失を防ぎ、人件費も削減できます。具体的には、在庫の欠品や過剰在庫を抑えることが可能です。

また、倉庫内に何が保管されているかが把握しやすくなり、迅速なピッキング作業にも役立ちます。これにより、出荷の遅延やミスが軽減され、顧客満足度の向上にもつながるでしょう。ほかにも、データ上の在庫と実際の在庫の相違も倉庫管理システムによって解決できます。

配送管理システム(TMS)

配送管理システム(Transportation Management System、TMS)は、輸送や配送の活動を効率化・最適化するシステムです

配送管理システムの導入によって、配車や配送計画、運賃の計算といった輸送に関連する要素を管理できます。主な利点として下記の3点があげられます。

・売上の最大化
配送管理システムを使用することで、最適な輸送ルートと運送計画の最適化が行えます。その結果、注文から配達までの日数や時間を短縮することが可能になり、顧客満足度を向上させ、売上の最大化に貢献します。

・業務時間の削減
効率的なルート設定によりドライバーの業務時間を削減します。また、計画や運賃計算の手間も減らし、管理にかかる時間短縮にも役立ちます。

・人件費や燃料コストの削減
最適なルート選択や運行監視により、人件費や燃料コストを削減し、プロセス全体の効率を改善します。

その他の物流システム

物流の基本活動に特化したシステムはWMSやTMS以外にもあります。それぞれの特徴を理解したうえで、自社に合った物流システムを見つけてみてください。

運行管理システム

運行管理システムは、ドライバーの運転行動をモニタリングし、急発進や急加速、急ブレーキ、アイドリング時間などを監視するシステムです。これにより、エコドライブを促進し、燃料効率を向上させることができます。

また、エコドライブの促進により燃料の無駄を減らせば、経費の削減にもつながります。ほかにもCo2の削減による環境への貢献も期待できるでしょう。

Hiroki
Hiroki

運転手ごとの運転時間、休憩時間、残業時間、待機時間を可視化することで、労働時間に関する法令順守や運転手の健康的な働き方の実現にも役立ちます。

貨物追跡システム

貨物追跡システムは、受注から納品に至るまでの流れを効率的に運用するためのシステムです。荷物の現在位置や状態をリアルタイムで把握することができ、荷主や運送業者は荷物がどこにあるのかが確認できます。

また、貨物追跡システムは、運送会社側にもメリットがあります。輸送中の荷物の位置情報を迅速に把握できれば、ルートの最適化や納期の遵守に役立つでしょう。これにより、サービスの品質も向上できます。

Hiroki
Hiroki

貨物追跡システムを顧客(消費者)にも使えるようにすると、顧客満足度の向上にもつながります。

EDI

EDI(Electronic Data Interchange)は、契約書、発注書、納品書などのビジネス文書を電子的なデータ形式に変換し、電子的な手段で取引パートナーとデータを交換するシステムです

EDIはこれまでの紙でのやり取りと比べて、データの転送がしやすく迅速かつ正確に情報の処理ができます。そのため注文処理や在庫管理、請求処理といった業務プロセスも効率的になり、ミスも削減できるでしょう

また、EDIを使用することで、紙文書の作成や印刷、郵送、保存といったコストも削減できます。

ピッキングシステム

ピッキングシステムは、作業者に対して正確で効率的なピッキング(商品の取り出し)の指示を提供し、出庫業務を効率化するシステムです

一部のピッキングシステムでは、自動化されたロボットが商品がピッキングの役割を果たすため、人の介入を最小限に抑えることもできます

ほかにもデジタル式の数量表示を使用し、作業者に正確なピッキング情報を提供することで、作業の効率化や精度向上にも役立ちます。

物流システムのメリット

物流システムを導入することで物流業務の可視化ができ、業務の効率化やサービスの向上に役立ちます。ここでは物流システムを導入するメリットを紹介します。

物流業務の可視化

物流システムを導入することで、物流業務が可視化できます。具体的には、商品の在庫状況や注文の受発注状況、配送の進捗状況などが一元的に管理され、リアルタイムでの表示が可能です

また、物流プロセスの進捗状況が可視化できると、どこがボトルネックになっているかが把握できます。たとえば、特定の倉庫で在庫が過剰であることが明らかになれば、在庫の調整や輸送ルートの最適化によって速やかな対策が可能です。

業務効率化とコスト削減

物流システムの導入によって業務効率化とコスト削減が期待できます。たとえば、システムの導入によって最適な配送ルートが設定されれば、運送費用が削減されます

また、集計作業など多くの作業を自動化できるため、従業員の負担も軽減します。手作業にかかる時間と労力を削減することで、生産性が向上し、人件費の節約にもつながるでしょう。

物流サービスの品質向上

物流システムの導入により、会社全体の物流状況が可視化されると、配送時のリードタイム(納期までの時間)も短縮できます

また、物流システムにより、どの商品がどこにあるのかが明確に把握できれば商品の現在地を顧客にも回答できるため、顧客満足度の向上につながり、長期的な顧客関係の構築が実現できます。

物流システムを導入する流れ

物流システムを導入する前には、現状の課題や問題点を特定して、システムの方針を決める必要があります。物流システムを導入する具体的な流れは下記の通りです。

課題の発見

まず、物流プロセス全体を詳細に分析し、問題点を特定します。これには、在庫管理の誤差、輸送ルートの非効率性、過剰な在庫、遅延した配送、高い運送コストなどが含まれます。 また、顧客からのクレームやフィードバックも重要な情報源です。過去の課題やトラブルを振り返り、物流における具体的な課題を洗い出します。

注意点として、特定した課題に対して個別の業務改善だけでは効果が限定的である可能性があります。なぜなら物流プロセスは相互に連動しており、一つの部分を改善しても他の部分に影響を及ぼすことがあるからです。

そのため、物流全体をトータルで最適化する視点が重要です。たとえば、在庫を削減してコストを削減したい場合でも、それが顧客サービスの低下や納期遅延につながらないかを検討する必要があります。

方針の決定

特定した課題を解決するためには、どのような物流システムを構築するかを検討します。その際に、システムの機能や予算、スケジュールなども明確に定義しましょう。

方針を明確にすることは、プロジェクト全体の方向性を示し、成功への道筋を作る重要なステップです。

特に経営主体で物流システムの構築を進める場合、現場の実態を正確に理解することが大切です。現場のスタッフや担当者とコミュニケーションを図り、ニーズや課題を把握することで、システムの設計や導入がしやすくなります。

システム構築

物流システムをどのように導入するか決まったら、システムの開発コストや運用コストの目安を決め、予算内で必要な機能を実装できるように計画を調整します。

また、システムの導入は段階的に進めることも方法の一つです。具体的には、大規模な変更を一度に行うのではなく、個別に実装して検証しながら進めましょう。これにより、問題の早期発見や修正がしやすくなります。

運用開始

物流システムが完成し、準備が整ったら、システムの運用を開始します。まず、システムの導入に関わるスタッフや関係者にトレーニングを行い、正しく操作できるようにしましょう

また、トラブルが発生した際の対応策やサポート体制を整えておくことも大切です。システムの運用開始後は、稼働状況をモニタリングし、問題が発生した場合は迅速に対処できるよう準備しておくと安心です。

物流システムの選び方

物流システムは大きく分けてクラウド型とオンプレミス型の2種類があります。それぞれ機能や費用が異なるため、自社の目的に合ったシステムを選びましょう。

提供形態から選ぶ

物流システムには大きく分けてクラウド型とオンプレミス型の2種類があります。それぞれの特徴は下記の通りです。

1. クラウド型(Cloud-Based)
クラウド型は、インターネット経由で提供される物流システムで、月額課金制で利用する方法が一般的です。初期コストが比較的低く、導入しやすいメリットがあります。

しかし、提供元のサーバー上で運用されるため、自社のカスタマイズが限定的な場合があります。クラウド型を選ぶ際は、自社の課題解決に必要な機能が搭載されているかどうかを十分に確認した上で選ぶと、失敗しにくいでしょう。

2. オンプレミス型(On-Premises)
オンプレミス型は、自社のサーバーに導入し、自社で管理・運用する物流システムです。自社の要件に合わせたカスタマイズが行いやすく、大規模な企業やデータセキュリティが優先事項の企業に向いています。一方、システムの構築により初期投資がかかるという注意点もあります。

搭載機能やUIから選ぶ

物流システムを選ぶ際は、自社がシステム化したい業務に対応しているかも確認しましょう。たとえば、配送管理や在庫管理、受発注処理、追跡機能、輸送計画など、必要な機能は事業者によって異なります。ほかにも将来的な拡張や変更にも対応できるかも考えて検討することも大切です。

また、UI(ユーザーインターフェース)は、システムを使うユーザーにとって重要な要素です。複雑なUIは現場のスタッフが使いづらく、業務効率の低下を招く可能性があります。

 システムを選ぶ前に実際にトライアルを行い、扱いやすいUIであることを確認しましょう。操作が直感的であり、研修やトレーニングの必要が少ないUIであれば、システムのスムーズな導入につながります。

物流システム導入の注意点

物流システムを導入する際は、導入の目的を明確にしないと、システムの効果が実感しにくかったり失敗に終わったりすることも少なくありません。ここでは物流システムを導入する際の注意点を紹介します。

導入する目的を明確にする

物流システムを導入する際は、導入の目的や理由を明確にして、自社の問題が解決できるのかを確認しましょう。なぜなら、目的を明確にしないと、導入による効果を実感しにくくなるからです。

導入の目的には、在庫管理の精度向上や運送コストの削減、配送効率の向上などが考えられます。また、目的を明確にすることで、自社の課題やニーズに合致する機能も優先して選びやすくなるでしょう。

コストに注意する

物流システムを導入する際は、導入と運用にかかるコストが削減見込みのコストを上回らないように注意しましょう。特に物流システムの導入には、初期費用がかかります。

予算内で導入するためには、ソフトウェアのライセンスやハードウェアの購入費用なども初期費用に含めて検討しましょう。

また、システムの導入後もメンテナンス費用やサポート費用といった運用コストが発生します。導入の際はこれらの費用も含めて考えられると、運用コストが削減見込みコストを上回るリスクを軽減できます。

現場への定着化を徹底する

アナログな管理方法に慣れている現場では、物流システムの導入に抵抗があるケースも考えられます。物流システムを定着させるためには、現場の理解を促し、協力を得ることが重要です。

そのためには、物流システムのメリットや効果を明確に伝え、現場スタッフの懸念や意見を受け入れる姿勢が大切です

また、トライアル期間のあるシステムを使用すれば、現場担当者に使い勝手や利点を体験してもらうこともできます。その際に不明点や課題がないかを確認すると、現場の理解も得られやすいでしょう。

セキュリティ対策やサポートは問題ないか

導入する物流システムは、取り扱うデータや機密性の高い情報が多いため、セキュリティ対策が万全かどうかも確認しましょう。具体的には、データの暗号化やアクセス制御が適切に実施されているかをチェックしておくと安心です。

また、 導入後のトラブルや問題に対して迅速に対応できるサポート体制が整っているのかも確認してみてください。サポート窓口の対応時間や連絡手段がわかれば、導入時の不安も解消しやすいでしょう。

ほかにも、システムのセキュリティを維持するための、定期的なアップデートやセキュリティパッチの提供が行われているかも確認のポイントです。

Hiroki
Hiroki

セキュリティやサポート体制が充実していても、様々な理由でシステムにトラブルが生じる可能性はゼロではありません。万一システムが使えなくなったときに、一時的に従来の方法へ戻して業務を行う等の緊急対応計画を策定しておくことも重要です。

まとめ

物流システムの導入によって業務効率化やコスト削減、サービスの向上につなげることができます。物流システムや搭載されている機能にはいくつか種類があるため、導入する目的を明確にすると、必要なシステムや機能を選びやすいです。

しかし、物流システムの導入には初期費用が掛かったり運用定着までに時間がかかったりするため、なかなか実施に踏み込めないかもしれません。

もし、自社内で物流業務を持たずにアウトソーシングすることも選択肢に挙げられるなら、物流システムを持った物流倉庫へアウトソーシングすることをおすすめします。

浜松委托運送では自社開発による独自の物流倉庫管理システム(WMS)を活用し、誤出荷なくスピーディな物流業務が可能です。お客様ごとにシステムをカスタマイズできるため、業務効率を上げたい方や物流システムの導入を検討中の方は、ぜひ一度お問い合わせください。

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